パッチクランプとは?

QPatchQubeは、イオンチャネルにおけるハイスループット電気生理学測定のために開発された自動パッチクランプシステムです。

パッチクランプの技術

パッチクランプは、1970年代半ばにベルト・ザクマン(Bert Sakmann)とエルヴィン・ネーアー(Erwin Neher)の両教授によって発表されて以来、イオンチャネル機能を研究する典型的な手法でした。 細胞膜全体にわたる総電流だけでなく、単一チャネル電流も直接測定することができます。 電解液を含み電極を構成するガラスマイクロピペットを細胞膜に圧着させ、膜片「パッチ」をピペットの開口部内にえ持ってきます。ガラスマイクロピペットの先端のへりと細胞膜との間にはギガオームレベルの電気抵抗に達するシール「いわゆるギガシール」が形成されます。 パッチ内にイオンチャネルが含まれていた場合、これらのチャネルを通過するイオンの移動は微小な電流(ピコアンペア)として測定されます。シールを横切るリーク電流は、ギガシールの高い抵抗によって無視できる程度に抑えられます。

パッチクランプの技術は、具体的に以下の5つで構成されています。

  • Cell-attached (on-cell): ピペットと細胞の間でギガシールが形成され、単一イオンチャネル電流の測定が可能です。
  • Inside-out: 上記のCell-attachedモードに達し、ギガシールが維持されている間にピペットを引いて細胞をちぎり取ります。膜の内側(細胞質側)が記録チャンバー内の還流液に面しています。この設定は、「細胞内」液を交換する機能を必要とする単一イオンチャネルの測定に使用されます。
  • Whole-cell: Cell-attachedモードの状態でピペット内に強い負圧を与えてパッチを破って細胞膜に穴を開けます。それによって細胞質とピペット内の溶液に直接接触します。短時間の後に、細胞質構成成分(分子および細胞内小器官)の拡散により、細胞およびピペット内の液体は均質(非生理学的)な化学組成に達します。この構成は細胞膜上のすべてのイオンチャネルの活性の測定に使用されます。
  • Outside-out: Whole-cellモードが形成された後、ピペットを静かに引き抜きます。これにより、シールが形成されたピペット先端の外側の膜が破れます。その後、膜断片は裏返って再びシールされ、細胞膜の外側をチャンバー内の溶液中に露出させた反転膜パッチを構成します。この構成は単一イオンチャネルの測定に使用されます。
  • Perforated whole-cell: ピペット溶液中に細胞膜に細孔を形成させる化合物(例えば、アンフォテリシンB、ナイスタチン)を加え、Cell-attachedモードを形成します。これによりパッチの穿孔が起こり、大きな化合物ではなく,小さな分子およびイオンのみがパッチを通過することが可能となります。その結果、大きな分子や細胞内小器官は細胞内に残ります。従来のWhole-cellパッチクランプと同様に、細胞膜全体を通過するイオンチャネル電流の総和が測定できます。

パッチクランプは、分子生物学の技術と組み合わせることで特に強力であることが証明されています。特定のイオンチャネルを培養細胞株で発現させて、パッチクランプを行うことで生物物理学的および薬理学的特性の詳細な特性評価が可能となります。

ハイスループットスクリーニングのためのパッチクランプ技術

残念なことに、パッチクランプ法は低スループットな技術です。 大変時間がかかり、熟練したオペレーターが必要です。 QPatchファミリーとQubeシステムは、1日に数百または数千データポイントのスループットで自動で並行したイオンチャネルスクリーニングを可能にし、より迅速かつ正確な創薬を可能にします。