神経変性の治療に、いつの日が毒が使用されるだろうか?
University of QueenslandにあるIMBのオートパッチクランプ施設で共有されているQPatchは、2012年の導入以来、複数のイオンチャネル研究グループに利用されてきました。50報以上の論文が発表され、彼らの研究は新たな分野を開拓し、毒性ペプチドやそれらのイオンチャネルモジュレーション研究において世界をリードしてきました。
来週、英国ケンブリッジのICMSで行われるDr. Fernanda Cardosoの講演に先立ち、彼女の研究室の毒に関する研究と、それが運動ニューロン変性における新たな研究につながった経緯について話を聞きました。
運動ニューロン変性研究を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
多くの人々を苦しめている神経変性疾患の治療薬が緊急に必要であると強く感じていて、それが私を研究に向かわせています。2015年にUQで開催された会議で、神経変性の伝達経路の解明や治療薬の開発にイオンチャネルモジュレーターを使用するうえで、大きな研究上のギャップがあると気づかされました。それから数年後、共同研究の機会も得て、自分の仮説を検証するために運動ニューロン変性に的を絞りました。
神経変性に関する研究を進める中で、予期せぬ発見や興味深い事柄・エピソードなどはありましたか?
興味深いことに、Lewis研究所で慢性疼痛の研究を行っていた際には標的から大きく外れていたものが、今では神経変性を食い止めるための主な標的となっています。 毒性ペプチドがこの標的をモジュレートする方法を深く研究した結果、そのスキルを新しいプログラムに転用できることに気づき、それが見事に機能しているのです。
克服すべき課題や、習得が必要な技術はありましたか?
私たちは、目的達成のために多くの難題に取り組んでいます。全身性の副作用を伴わずにイオンチャネルモジュレーターの治療効果を最大限に引き出すため、中枢神経系に限定したデリバリー戦略を開発しています。また、in vitro、ex vivo、in vivoのスクリーニングを並行して行うことで、初期段階からペプチド候補がin vivoで良好な結果を出すことを確認しています。 主な課題のひとつは、げっ歯類モデルにおけるex vivo電気生理学実験のスループットを向上させることです。これは、医薬品開発プロセスにおいて極めて重要な実験であり、今後のin vitro実験の指針となるものです。 私たちは力を合わせて、画期的な治療法への道を切り開いています。
先生方の論文で示されている技術の幅広さは目を見張るものがあり、学際的な研究が実り多いものであることを示す素晴らしい実例です。これはIMBが推進していることなのでしょうか、それとも、先生方が努力して開発してきたことなのでしょうか?
学際的研究のために強固な専門家ネットワークを構築するには、努力が必要です。私の研究では、中枢神経系の電気生理学、運動ニューロン変性のゼブラフィッシュ前臨床モデル、そして臨床研究の専門家と協力し、多くの助言をいただいています。この素晴らしい協力ネットワークは、IMBの外ではありますが、University of Queensland内のものです。協力し合うことで、難題を克服し画期的な成果を得られると考えています。
今後数年間でのラボの研究の方向性は?
数年のうちに神経変性疾患に苦しむ方々に大きな利益をもたらす革新的な研究成果を得ることを目指しています。 高度な毒ベースの薬剤開発プラットフォームにより新しい治療法を開発し、戦略的かつ革新的な薬物送達システムを用いることで大きな進歩が得られるでしょう。 私たちは協力して、助けを必要とする人々のために明るく健康的な未来を創り出します。
南半球という地理的位置が、独立心と開拓者精神をもたらしているのでしょうか(皆さんが非常に生産的で、常に革新的な新しい分野の研究に取り組んでいることから、そのように思えます)。地理的に、共同研究や資金調達などが困難であると感じますか?
10年近く私の指導教官であったRichard Lewis教授をはじめとしたイオンチャネルと毒性ペプチドの分野の優れた研究者たちの影響で、私も開拓者精神に突き動かされ研究を続けています。南半球では共同研究や資金調達に制限があるにもかかわらず、私の新しい神経変性プログラムは、オーストラリアではなく米国政府から十分な資金援助を受けています。
オーストラリアにも素晴らしい共同研究者の先生方がいるものの、私の研究を革新的な領域へと押し進めるには、国際的なネットワークが不可欠でした。だからこそ、私は近く開催されるケンブリッジでのICMSをとても楽しみにしています。ネットワークをさらに広げ、研究における新たな境地を開拓し続けたいと思っています。
Dr. Fernanda Cardoso、ご研究についき詳しくお話しいただきありがとうございます。ケンブリッジで開催されるICMS UK 2024でのご講演「Probing ion channels on motor pathways sheds light on pathophysiological mechanisms and key drug targets in motor neurodegeneration(運動経路のイオンチャネルの徹底研究が運動神経変性における病態生理学的メカニズムと主要な薬剤ターゲットに光を当てる)」を楽しみにしています。
残念ながら、このイベントは満席です。参加できない方もご安心ください。シンポジウム終了後、講演の録画を当社ウェブサイトにて公開いたします。