Primary screening

一次スクリーニング時におけるQUBEとFLIPR の比較

イオンチャネルの生理学や薬理学の研究では、長年にわたって手動によるパッチクランプ実験が用いられてきました。この技術は精度が高いものの、スループットが非常に低いものでした。スループットの低さの問題は、今日では改善されています。2000年代初頭に自動パッチクランプ(APC)が発明されて以来、その技術は、384フォーマットの高忠実度パッチクランプ装置であるQubeのように、主要なスクリーニング技術として適用できる段階まで発展しました。

創薬は、次の薬を探すための試行錯誤の連続です。ターゲットが特定されると、化合物ライブラリーをスクリーニングしてヒット化合物を見つけ、そこからリード化合物や後の薬剤候補を生み出すことになります。このプロセスは、基本的に次の2つのパラメータに影響されます。

1. 単位時間あたりの実験数
2. スクリーニング結果の有用性の程度

図1 漏斗状の創薬プロセス

パラメータ1は、短い時間スケールで測定し評価することが容易です。パラメータ2を完全に評価するためには、もう少し洞察力が必要です。多くの創薬プロセスでは、図1に示した漏斗のような流れで説明することができます。ハイスループットスクリーニングの後に、二次スクリーニング、つまり確認のためのスクリーニングが行われ、次にリードの最適化、安全性試験、プロファイリングが行われます。ターゲットがイオンチャネルの場合、二次スクリーニングからはすべてパッチクランプで行われますが、スループットが低いため、ハイスループットスクリーニングは蛍光ベースの技術と同義となっています。蛍光ベースの測定技術はパラメータ1で高いパフォーマンスを発揮します。

APCで384フォーマットが使えるようになってから、電気生理試験を一次スクリーニングとして行うことができるようになりました。そのため、図1の暗い部分で示されるように、一次スクリーニングで電気生理試験による確認が済んでいるため、二次スクリーニングを省略することができます。

“でも、FLIPRと比べて高いんじゃないの?”と疑問に思われるかもしれません。

 

FLIPRは1ウェルあたり約5~10セント、APCは1ウェルあたり約20~30セントなので、データポイントあたりの価格は若干高くなります。しかし、図2に示すように、創薬プロセスのin vitro部分全体を考えてみて下さい。「Traditional….」とは、蛍光ベースの技術をプライマリースクリーニングとして使用した場合を意味します。この2つのプロセスでは、ターゲットの発見およびバリデーションの期間に差はありません。FLIPRを用いたアッセイ開発(assay development)は、Ca2+感受性色素や電位感受性色素などを見つけるためにいくらか時間を要します。一方、Qube APCはパッチクランプ法を採用しているため、ターゲットの発見およびバリデーション期と同時にアッセイ開発は行われます。スクリーニング期間はFLIPRの方が速いのですが、APCがそれに追いついき、また追い越すことができる理由は2つあります。

a. パッチクランプデータなので、ヒットバリデーション実施の必要がない。
b. 蛍光ベースの測定技術のような下流/二次メッセンジャーによる間接的な測定ではなく、イオンチャネルそのものから記録したデータであるため、ヒット率/リード率が高い。

図2 一次スクリーニングにAPCを導入することで、創薬にかかる時間を短縮することができる

 

特にパラメータb)は創薬化学者がより良いデータを得られることを意味しており、彼らが構造を最適化した分子を合成して試験する際にもパッチクランプ法が用いられるため、同じ種類のデータを得ることができます。つまり、作用機序やサブタイプ選択性などのより高度なオンターゲット効果と、心臓への影響などのオフターゲット効果の両方が、創薬の非常に早い段階で得られることになり、より迅速でコスト効率の高いプロセスが可能になります。図2で示すように、プライマリースクリーニングにAPCを使用することで短縮された時間が、最終的な医薬品にまで開発された後の特許寿命の延長につながることを想像すると、APCを前もって使用することの価値が非常に高まるでしょう。

蛍光法によるスクリーニングとAPCとの比較でよくある話題と質問

 

より少ないウェルでの濃度反応取得

 

IC50値を決定するために、FLIPRで通常の22ポイントの濃度反応実験を行っていますか?もちろん、22ポイントは化合物プレートのレイアウトには合っていますが、化合物プレートごとに細胞を播種したアッセイプレートが必要になります。さらに重要なことは、すべての濃度においてコントロールがないということです。このようなアッセイを、自動電気生理プラットフォームを用いて濃度累積適用で実行することを考えてみてください。

  • 22の濃度すべてが、コントロールを持つ同じ細胞からの応答として記録されます。
  • 22個のウェルを使用する代わりに、1個のウェルで22種類の濃度の試験を行うことができます。
  • 電気生理学実験データは、イオンチャネルへの作用を直接読み取るため、より予測しやすい結果が得られます。

参考資料: High throughput screening for mode-of-action on NaV1.4

 

電気生理学的測定によるスクリーニングには時間がかかりませんか?

 

確かに、自動電気生理試験は、蛍光ベースのスクリーニングほど速くはありません。自動パッチクランプ装置は今のところ384フォーマットしかなく、1536フォーマットはありません。しかし、自動化された電気生理測定は無人で実施できるので、スループットを補うことができることを忘れないで下さい。

  • 装置の周りに人がいなくても8時間以上全自動で稼働することができます。
  • 9,000ウェル以上のアッセイを無人で実施可能です。
  • 24時間で25,000ウェル以上のアッセイが実施可能です。
  • 大規模スクリーニングをサポートする高いZ’値(高精度データ)
  • 電気生理学実験データは、イオンチャネルへの作用を直接読み取るため、より予測しやすい結果が得られます。

参考資料: NaV1.1 currents on Qube
High-Throughput Screening of NaV1.7 Modulators Using a Giga-Seal Automated Patch Clamp Instrument

 

どのようにケミストを助けるのがベストなのでしょうか? -ヒットからリードをより早くするために

 

一次スクリーニングを蛍光ベースの機器で行った場合、その結果を電気生理学的に確認する必要があることがよくあります。なぜ最初からそうしないのでしょうか?あなたの専門知識と化合物の取り扱いに必要なすべての設備を活用して大規模スクリーニングプロジェクトを実行し、高精度の電気生理学測定機器を用いて化合物の薬理作用を確認することで、御社の化学者はモデリングプログラムにそのまますぐに向かうことができます。言い換えれば、ヒット化合物がリード化合物になるまでの時間を短縮できるということです。

  • アダプティブプロトコルによるより正確な薬理学的評価
  • 候補分子に対してより適切な質問を投げかけることができる
  • 候補分子に対してより微妙な効果を追求することができる

参考資料: Adaptive voltage protocols increase precision of voltage-gated ion channel measurements on highthroughput automated patch clamp platforms

 

どのようにケミストを助けるのがベストなのでしょうか? -より良いリードを得るために

 

理想的な世界では、どのような病気に対しても、開発したいと思う分子をモデリングで作り出すことができます。しかし現実の世界では、データが必要であり、予測可能なデータであればあるほど良いのです。イオンチャネルを調べる場合、最良のデータは電気生理測定から得られます。そして、このデータをスピードを損なうことなく得ることができます。384フォーマットの高精度電気生理測定を無人で行うことで、御社の化学者は常に必要なデータを時間内に得ることができ、さらに重要なことには、より良い薬を作るために必要なデータ内容を得ることができます。

  • State依存性の作用機序
  • on/off 率
  • IC50
  • 10~40℃ 範囲内任意の温度における上記すべて

参考資料: Multi-parameter ion channel screening: mechanism-of-action data directly from HTS
Adaptive voltage protocols increase precision of voltage-gated ion channel measurements on high-throughput automated patch clamp platforms

 

開発早期におけるhERGやNaV1.5による心機能毒性リスクの回避

 

化合物の心機能毒性評価はどのようなタイミングで行っていますか?薬剤開発の初期段階で、しかも複数のターゲットについて評価することができたら素晴らしいと思いませんか?例えばhERGやNaV1.5において電気生理学的試験を行えば、一度の手続きで心機能毒性評価を行うことができ、そして問題に対処するために化学構造の最適化に向き合う必要があるかを早い段階で知ることができます。

  • 安定した電位クランプを活用する
  • 蛍光測定よりも良好な時間分解能を活用する
  • マルチホール・レコーディング・モードを活用する
  • 例えばhERGとNaV1.5の薬理作用を同じアッセイで試験する

参考資料: Simultaneous Measurement of Cardiac hERG and NaV1.5 Currents Using an Automated Qube Patch Clamp Platform

 

脱感作を示すリガンド作動性イオンチャネルでも問題なし

 

リガンド作動性のターゲットの中には、リガンドへの暴露時間が短くないと脱感作してしまい、再刺激を受けつけないものがあります。もしスクリーニング機器にウォッシュアウト機能がない場合、この脱感作が問題となります。しかし、微小流体流路を用いた電気生理学的測定では、非常に短い暴露時間でターゲットを何度も刺激することができるため、問題はありません。また、コントロール時におけるチャネルの動作を解析するのにも役立ちます。

  • AchRα7のような高速で脱感作するリガンド作動性チャネルでも繰り返し刺激を行うことが可能
  • 各細胞が自身をコントロールとなる累積適用薬理実験が可能
  • コントロール時でも化合物適用時でも標的となるチャネルのキネティクスを追うことが可能
  • 上記の全てを384フォーマットで無人で行うことが可能

参考資料: Characterization of the rapidly-desensitizing α7 nicotinic acetylcholine receptor using the Qube

Qube 384

イオンチャネルのハイスループットスクリーニングを手軽に実施できます。