QPatchにおけるCiPA Milnes hERG動態アッセイ


著者: Edward S A Humphries, Metrion Biosciences Ltd. and Thomas Binzer, Sophion Bioscience A/S


心毒性における副作用は,未だに創薬プロセスにおいて新規 化合物の開発が中止される要因となっており(Valentin and Redfern, 2017),ヒトの臨床リスク予測のためには前臨床に おいてより厳格なin vitro, ex vivoおよびin vivoアッセイやモ デルが必要とされている.現在製薬業界では従来のヒト遅延整 流性カリウムイオンチャネル(hERG, KV11.1) アッセイおよ びQT延長検出アッセイに対する過度の依存から脱却する方向 にあり,特に心不整脈による患者のリスク予測についてよりバ ランスの取れたアッセイを提供する新たな取り組みが進められ ている.FDAが主導するComprehensive in vitro Proarrhythmia Assay(CiPA)と日本の規制当局(JiCSA,CSAHi)は,パッチクランプによる電気生理学スクリーニングパネルに他
のヒト心臓イオンチャネルを追加することでより正確にモデ ル化し,不整脈リスクを予測することを目指している.この 広範なデータを最新式のヒト心室活動電位のin silicoモデルで 解析することにより不整脈の予測が行われる.英国,EU,米 国,日本のワーキンググループの5年間にわたる広範な共同 作業の結果,心筋イオンチャネルアッセイの‘ビッグ6’パネル (hERG,NaV1.5,CaV1.2, KVLQT1,KV4.3,およびKir2.1 )から得られたデータを,標準的なin silico活動電位モデルに 組み入れることで,十分にリスクプロファイルが明らかになったほとんどの臨床薬(ただしすべてではない)について,催不 整脈リスクを正確に予測できることが明らかとなった.FDAおよびCiPAワーキンググループによる最近の研究では,いわゆる ‘Milnes’電位プロトコール(Milnes et al., 2010; 図 1)で得られたhERG-薬物動態データを,改良型の‘ダイナミッ ク’O’Hara-Rudy in silicoモデルに適用することで,キニジン やシサプリドなどの化合物の心臓への負荷を正確に予測できる ことが示された(Li et al., 2017).薬物のhERGチャネルへ の結合と解離の動態は化合物の効力を決定する基本的要素で あるが,チャネルのポアに捕捉される化合物がより高い臨床 でのリスクを有するという証拠が示された(Pearlstein et al.,2016).薬物の作用,効力および心臓への負荷の重要性を鑑 み,hERGチャネルへの結合動態特性および薬物捕捉性を確実 に測定するために,これまでは高忠実度が保証されたマニュア パッチクランプ記録のみが採用されてきた.本レポートでは,自動パッチクランプ(APC)プラットフォー ム上で,ダイナミックな薬物-hERG動態を正確に記録すること ができる‘Milnes’電位プロトコールの適用例を報告する.